彼岸花咲く。

稲穂が頭を垂れ始めると、あぜ道が朱色に染まる。
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彼岸花の季節である。
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この季節になると、枝も葉もない茎が地上に出てくる。
その先端に苞に包まれた花がついている。
そして5~7個前後の花が顔を出す。
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花は短い柄があって横を向いて開き、ほぼすべての花が輪生状に外向きに
ならんでいる。
秋の終わりになると線形の細い葉を四方八方に広げている。
葉は深緑でつやがある。葉は冬中は姿が見られるが、翌春になると枯れてしまい、
秋が近づくまで地表には何も生えてこない。
花にしても葉にしても自分の役割をわきまえているようで潔い。
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その潔さそして花の強烈さであろうか、いろいろな名前を持つ。
マンジュシャゲ(曼珠沙華)シビトバナ(死人花)、ユウレイバナ(幽霊花)など、
毒性や墓地に多く咲くことからと思われる名前。
ハミズハナミズ(葉見ず花見ず)花の季節に葉がなく、葉の季節には花がないことから。
あるサイトによれば、地方名を数えると1000種を超えるとのこと。
キツネノタイマツ(狐の松明)の別名に新美南吉の「ごんぎつね」を思い出す。

お午がすぎると、ごんは、村の墓地へ行って、六地蔵さんのかげにかくれていました。
いいお天気で、遠く向うには、お城の屋根瓦が光っています。
墓地には、ひがん花が、赤い布のようにさきつづいていました。
と、村の方から、カーン、カーン、と、鐘が鳴って来ました。葬式の出る合図です。
やがて、白い着物を着た葬列のものたちがやって来るのがちらちら見えはじめました。
話声も近くなりました。葬列は墓地へはいって来ました。
人々が通ったあとには、ひがん花が、ふみおられていました。


彼岸花の朱、葬列の白そして墓地の灰色の対比が物語の背景にあり、
鐘の鳴る音と共に静かな悲しみが漂う。
そして最後の場面
「ごん、お前だったのか。いつも栗をくれたのは」
 ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。
 兵十は火縄銃をばたりと、とり落しました。青い煙が、まだ筒口から細く出ていました。


白い煙ではなく、青い煙と結んでいるところにこの作品の真髄が隠されているように
思っていたのだが…
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by shin0710s | 2016-09-13 16:39 | | Trackback

ダックス4匹の愛犬と猫1匹の動物たち。周囲約7kmの世界で見聞したことを日記風に書いています。


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