2012年 01月 06日
一枚の賀状から。
20年ほど前に新任の教頭として赴任した学校で同勤した先生である。
彼は、素晴らしい力を持っていた。
授業の切り口は子どもたちの意欲をかき立てる。
思わぬ人をG・Tにするなど斬新なものであった。
職員で子どもたちのためにペープサートをしたいといってきたことがある。
その題材となったのが「牛の敵討ち」である。
人の優しさがなんと自分勝手なのもであるか。
独りよがりのものであるか。
そして理不尽なものであるかを考えさせてくれる作品である。
彼は、子どもたちに人とはどうあるべきかを考えさせたかったに違いない。
ある日学校の正門に言葉を掲げることになったとき、彼が提案したのは、
「あなたがいるから楽しい学校」
である。
あなたとは私である。
私から見ると、あなたとは、私以外の全ての人である。
この呼びかけの言葉も私の心に響くものがあった。
彼の感性の純粋さにすばらしさと怖さを感じることもあった。
彼を理解してくれる人が必要だと。
その後、結婚し、子どもが授かり、毎年の賀状に子どもの成長を
喜ぶ言葉が綴られていた。
また時折、研究授業の資料等も届けてくれていた。
数年にわたり届いていた賀状がいつの間にか途絶えていた。
そして昨年、彼の名を紙上で知ることになる。
住所も以前とは異なり独りで住んでいた。
彼の中でどのような心の変遷があったか知るよしもない。
彼の強さと弱さは、私と重なるものであった。
彼と違うとするなら、私は、下戸である。
そして彼は、深酔いをするということであろう。
それが、彼の道を大きく変えたきっかけである。
しかし、それはきっかけに過ぎない。
人間に対する信頼、尊敬、そして揺れ動く自分の心ではなかったか。
今年の彼の賀状は、私に重い問を投げかけている。