賀状を眺めつつ

今年も終わりが近づいた。残すは10日余り。
賀状が気にかかる。
もっと早く取りかかればいいものをどうしても後回しになる。

昨年の賀状を取り出し、宛先を確認する。
12月に入り喪中欠礼が届いている。
その葉書は、父や母の逝去を記したものが多い。
中には、一緒に仕事をした人や同級生を記したものがある。

いつの間にか老いの支度から死への支度をしなければならない年齢になっている。
まだ若いつもりはもう若くないのである。

酒もたばこも嗜まない。だからといって老いが待ってくれるわけではない。
確実に体のあちこちにがたが来ている。
反射神経も動体視力も落ちていることを車の運転をする中で気づいている。

通勤の行き帰りに墓地がある。
整った墓石や俳句をしたためた記念碑的なお墓もある。
墓地と言うより公園的な場所となっている。

その反対側には、朽ち落ちてしまいそうなお墓が並んでいる。
野辺送りの場所にふさわしい墓地である。
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こうしていつの間にか人々の記憶から薄れ、記録の文字すら消えてしまうであろう
人の一生に意味を見いだすことは難しい。

春暮れて後、夏になり、夏果てて、秋の来るにはあらず。春はやがて夏の気を催し、夏より既に秋は通ひ、秋は即ち寒くなり、十月は小春の天気、草も青くなり、梅も蕾みぬ。木の葉の落つるも、先づ落ちて芽ぐむにはあらず、下より萌しつはるに堪へずして落つるなり。迎ふる気、下に設けたる故に、待ちとる序甚だ速し*。生・老・病・死の移り来る事、また、これに過ぎたり。四季は、なほ、定まれる序あり。死期は序を待たず。死は、前よりしも来らず。かねて後に迫れり。人皆死ある事を知りて、待つことしかも急ならざるに、覚えずして来る。沖の干潟遥かなれども、磯より潮の満つるが如し。
(徒然草155段)


今日は、お世話になった先生の訃報が届く。享年72歳。
随分怒られた。そしてたくさんの教えを受けた。
「つひにゆく 道とはかねて 聞きしかど 昨日今日とは思はざりしを」
                 在原業平

としている私である。
その私に、今を生きる意味を問へ、との訃報であろう。

死期は序を待たず。死は、前よりしも来らず。かねて後に迫れり

の兼好法師の言葉が迫る。
by shin0710s | 2012-12-21 19:17 | ことば | Trackback

ダックス4匹の愛犬と猫1匹の動物たち。周囲約7kmの世界で見聞したことを日記風に書いています。


by shin0710s