「仏教抹殺」鵜飼秀德 著を読む。

久しぶりに丁寧に読んだ本である。

「仏教抹殺」なぜ明治維新は寺院を破壊したのか 鵜飼秀德著

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書評に同感するものが多かった。



明治初期の薩摩藩の徹底的な廃仏毀釈に興味があり、以前鹿児島出身の人に尋ねてみたところ「知らない」とのことだった。
その時はその人が歴史に興味がない為かと思っていたが、この本で鹿児島に廃仏毀釈の史料は残っておらず、
仏教由来の国宝や重文もゼロ、県の文化財関連予算の規模も小さく公的調査や復元の妨げとなっているそう。
鹿児島では廃仏毀釈はなかったことのように扱われているという事実。
この時代に日本では数多くの仏像が破壊され、また海外に流出していった。
現代の私たちが天平の仏像を拝観できるのがどんなに奇跡的なことであるか。



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僧侶の著者が明治期の廃仏毀釈について調査。被害の大きい鹿児島、松本などの他、伊勢、東京、奈良、京都での実態を丹念に追い、
とても興味深かった。廃仏毀釈は明治政府主導で進められたと思っていたが、必ずしもそうではない。
神仏分離令に対し、旧藩主の忖度、権威的な僧侶への恨み等から、一部地域で苛烈な運動が起こった。
その惨状を伝えつつ、堕落した仏教への綱紀粛正でもあったと捉える著者の真摯な視点が印象的。
新しいイデオロギーが必要だったにせよ、古来から続く信仰・文化を踏みにじる蛮行の数々には、人の醜さを感じずにいられない。






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この本は面白い。明治維新での廃仏毀釈の活動は教科書でも知られているが、なぜそれが起きたのか、
またどこでその活動は顕著だったのかをこの本で詳しく知ることができた。
廃仏毀釈の要因は筆者によると、主に4つあげられる。➀権力者の忖度 ➁富国策のための寺院利用 ③熱しやすく冷めやすい日本人の民族性
④僧侶の堕落 神仏分離令からの拡大解釈によって、多くの貴重な文化財がこの世から消えてしまった。
本当にもったいなく残念な出来事だがこの愚行からも学ばなければならない。日本の仏教は長く神仏習合であった。それが自然の姿ではないか。


by shin0710s | 2019-06-27 19:01 | 読書 | Trackback

ダックス4匹の愛犬と猫1匹の動物たち。周囲約7kmの世界で見聞したことを日記風に書いています。


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